二重人格神様~金と碧の王~

「その、はい。ですが、半神だと言われ今までの事が納得出来ました」

「…うん…その、ごめんなさい。なんか、騙したみたいで」

「それは、謝ることではありません。騙されていたなどと思っていません。いのり様も知らなかったのですから」

少しふらついた身体を支えるようにアレスは背中に手を伸ばす。


嬉しいよ。でも、わたしは…もう、いらないんだよね。だって、最初から愛されてなどなかったんだもん。ただ、遊ばれていた、だけ。


「いのり様…あの、どうして…そのように悲しい顔をなさるのですか?」


「…」


「以前、海鈴様のことやグレン様の事で悲しんでいた時と同じ顔をしています。夢に魘されていると聞きましたが…主に関わる悪い夢でも…」


「…ち、違うよ。ちょっと、具合が悪くて…あ」


まただ。また、頭を殴られたように痛い。身体にも痛みが走り、その身を抱くように蹲る。


すると、突然伸びて来た腕に肩を抱かれ思わず見上げるとお父さんの姿。


「…あ」

お、お父さん?


嫌な夢が蘇る。先ほど、見た…あのこと。お父さんはお母さんと私のこと…。


あからさまだったと思う。ワザとらしく視線を反らし、その腕から逃げるように距離をおく。


アレスの袖を掴み、背を向ければアレスも少し驚いたような顔をする。


「いのり…?」

「……」


最低だって、分かっている。でも、あんな事をきいて、もう…お父さんをお父さんとして見られないよ。

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