二重人格神様~金と碧の王~

そんな私の態度に、お父さんは暫し黙ると、そのままアレスを見下ろした。


「様子を見に来たんだが…やはりこの場所はもう駄目か。アレス、ここには何時間前に移動した」


「あ、はい。10時間ほど前に…もう、移動するのは5回目です」


え…まって、わたし…また、そんなに眠っていたの?


もう、駄目だ。時間の感覚も分からなくなってきた。


「そうか…花の保護もそろそろ危うい。アレス、いのりをこっちに連れてきてくれ」


そう言われ、アレスは私の腕を肩にまわす。促されるように歩くとその足元には枯れた睡蓮の花が溢れている。


聞いたわけじゃないけれど、なんとなく分かる。これは、私のせいだって。


そのままただ、促されるまま歩けば、いつの間にかそこには大きな屋敷があった。

ポツンと真っ白い世界のなか、その屋敷はとても目立っている。深海や冥界の屋敷よりも大きく、とても、静か。



中に入れば、それは余計に感じた。まったく誰の気配も感じない。覚醒したせいだろうか…この屋敷の隅々空気かんじる。そこに誰も触れていない。


お父さん…こんな場所につれてきて、どうするつもりなの?

もしかして、私を隔離…するの?


不安な顔をする私を背後にお父さんは、階段をのぼる。そして長い渡り廊下を歩いた。


とても長い距離だったと思う。1キロは歩いたかと思うような錯覚に襲われ、ただ黙って後を追った。


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