二重人格神様~金と碧の王~

そして、たどり着いたのは大きな扉。分厚い枷が扉に巻き付けてある。その枷にお父さんが手を触れればガチャと音をたて床に落ちる。

ギィと軋む音を立てながら扉があき、中をみればその中身に気が抜けた。


「あの、シャカ様…ここは?」


中は普通のお部屋。ベッドがあり、家具があり、窓からは真っ白い世界が見える。


「ここで、少し休ませるといい。気分転換ではないが、何の力の影響も受けないここなら、良くなるかもしれない」


「なる、ほど。いのり様、ベッドに横になりましょう」


私の身体を持ち上げ、そのままベッドに寝かせるとふわふわの布団をかける。


「いのり、何か食べるかい?好きなものがあれば、人間界から持ってくるが?」


「…う、ううん…」


それは…なにかを盛るつもりなの?前に…されたように…。


お父さんの顔は見たくなかった。掛けられた布団をかぶり、顔を隠せばお父さんのため息が聞こえる。


「どうやら…私の顔は見たくないみたいだ。嫌なものでも見たようだね」


「…シャカ様…」

「また、いのりの事を頼んだ。何かあれば、すぐに呼ぶといい」


そう言うと、お父さんは振り向くことなく部屋を出ていった。


少し、ほっとした。だって、あんなことを聞いたあとなんだもん。目を合せることなんか、出来ないよ。


いなくなった事を気配で確認すると、かぶっていた布団から顔をだす。

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