二重人格神様~金と碧の王~


***

意識がとんだあと、また、私はここにいた。

目の前には、涙を流すお母さんと、それを見下ろすお父さん。そして、背後には海鈴さんとグレンさん。

どちらとも、とても冷たい目をしている。何も言わないもの、その目はあの事を思い出してしまう。

また、ここに来てしまったんだ…。真っ黒い世界、先も見えない、下も上も分からない。
ただ、呆然と彼らを見つめれば、また…声がする。


『また、会えたわね。嬉しいわ』

姿は見えない。声だけが聞こえ、その声に恐怖が募る。

『この前は邪魔が入ってしまったけど、今度はゆっくりと話せるわ』

『……』

『覚悟は、出来たの?』

背中に少し冷たい何かを感じ振り向くと、そこにワタシがいた。

『かく、ご?』

『そう。辛い記憶を忘れる』

あぁ、そうだった。わたし…忘れる事にしたんだっけ…


お父さんの事も、海鈴さんの事もグレンさんの事も…そして、楽になりたい。


どうせ…迎えになんかこないんだもん。アレスだって、肩を持つように嘘…なんか、ついてさ…。

本当は、私がいなくなって、全部を忘れるのを望んでいる。


お父さんも私をあそこに隔離するつもりなんだ、よね。誰もいないあの場所に…

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