二重人格神様~金と碧の王~
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意識がとんだあと、また、私はここにいた。
目の前には、涙を流すお母さんと、それを見下ろすお父さん。そして、背後には海鈴さんとグレンさん。
どちらとも、とても冷たい目をしている。何も言わないもの、その目はあの事を思い出してしまう。
また、ここに来てしまったんだ…。真っ黒い世界、先も見えない、下も上も分からない。
ただ、呆然と彼らを見つめれば、また…声がする。
『また、会えたわね。嬉しいわ』
姿は見えない。声だけが聞こえ、その声に恐怖が募る。
『この前は邪魔が入ってしまったけど、今度はゆっくりと話せるわ』
『……』
『覚悟は、出来たの?』
背中に少し冷たい何かを感じ振り向くと、そこにワタシがいた。
『かく、ご?』
『そう。辛い記憶を忘れる』
あぁ、そうだった。わたし…忘れる事にしたんだっけ…
お父さんの事も、海鈴さんの事もグレンさんの事も…そして、楽になりたい。
どうせ…迎えになんかこないんだもん。アレスだって、肩を持つように嘘…なんか、ついてさ…。
本当は、私がいなくなって、全部を忘れるのを望んでいる。
お父さんも私をあそこに隔離するつもりなんだ、よね。誰もいないあの場所に…
。