二重人格神様~金と碧の王~

『何も言わない…って、ことは、いいのね』

『うん…』


『わかったわ。すぐに楽になるから。痛みはないわ…』

そう耳元で囁くと、ワタシは私の目を塞ぐ。そして、そのまま額をさわった。

なにか、変な気分がする。なにかが流れこんで…何かが消えていくような感覚。


同時に、身体を襲っていた痛みが嘘のようになくなっていった。


そして、なんか眠い。薬でも飲んだかのよな眠気。でも、なんか気持ち良い。ずっと眠っていられそう。

重くなる瞼に逆らうことなく身を委ねると、また、声が聞こえた。


『いの…り』


『…?』

聞いたことのある声。なんだろう…この声…不思議だ。この声で名前を呼ばれたのは初めてなのに、何回も聞いたことのある気がする。

『だ…れ』

『駄目よ。声に耳を傾けちゃ…じゃないと、忘れられないから』

そうだ…私は忘れるんだ…だから、ワタシに任せないといけない。

『そう、身体をワタシにあずけて…』

スッと、また身体に何かが流れ込んで来た時、誰かが私の手を握った。

え…。

とても、リアルな感覚。暖かくて、優しいこの手は…

そっと、つぶっていた目を開けた。ぼやける視界の中、見えたのは白い光に包まれた女の人。

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