二重人格神様~金と碧の王~

『あ…』

『いのり、促されてはいけない。きちんと自分を信じ、彼を信じて』


ま、待って…この人…

『お…おかあさん?』

『えぇ』

私の前には、亡くなったはずのお母さんがいた。草原の時とは違う、きちんと私の目をみて話している。


『な、なんで…』

『シャカがね…私が亡くなる時に、大きくなった貴女に一回だけ会えるようにしてくれたの』

『おとう、さんが?』

『そうよ。それより、今はそれ以上に大切なことがある』

そういい。背後のワタシをみつめ、私の身体に巻き付けた腕を強引に引き離す。

『もうやめて。私のいのりを悲しませないで』

『え…?』

ふりかえると、ワタシだった存在は姿を保っていない。黒い塊に変化し、そこにいた。

『これはね、神の魂なの。亡くなった神様が亡くなったことに悲しみ、誰かの身体にのりうつる。精神的に相手を苦しめ、楽になれると誘導してしまうの』

『…あ』


『もう、輪廻の輪のお帰りなさい。誰かの人生を生きるのではなく、生まれ変わってあなたの新しい人生を生きて』

お母さんの言葉に、黒いモノはまるで嘘のように消えていき、カタチも分からなくなった。

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