二重人格神様~金と碧の王~
『そうね。沢山泣いたし、傷つけられたこともあるわ』
『やっぱ…り』
あれは、本当だったんだ…。
同意され、あの事が本当だったと再度思えば悲しくなった。いつも一緒だったお父さんが嫌いになりそうなくらい…辛い。
それなのに、お母さんは微笑み、言った。
『でもね、どんなに傷をつけられても、こんな姿になっても、私はシャカを思っている。あ!もちろん、貴女のこともよ?』
『そんな…だって、お父さんには別の人が…私は…見たから…お父さんの事も、彼らの事も…ぜんぶ、みて…あっ』
お母さんは私の手を握る。そしてそっと頭にふれ、私を抱きしめた。
『お母さん…?』
『いのり?最初で最後に、貴女に言っておくわ』
『……』
『貴女が何をみたかそれは知らない。でも、私は彼を信じているから。だから、貴女も信じて?いのりが心に思う彼らを。そして、シャカを』
彼らを…お父さんを、信じる?前にも。誰かに言われた気がする。見た事のない…小さな男の子に。
『お父さん…海鈴さん…グレン…さん』
姿が脳裏に浮かんだ。同時に浮かんだのは、過ごしてきた沢山の時間。
「いのり」と私の名前を呼ぶ彼らの声。手を伸ばしてくれた彼ら。抱きしめてくれた暖かい手。触れあった体温。思い出せば、一瞬で愛しさが溢れる。
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