二重人格神様~金と碧の王~

***


いのりが去っていた方を彼女はずっと見つめていた。姿が闇で見えなくなるまで見つめ、肩で息をはく。

『…いのり…』

少し寂しさが含まれた声が響くと、彼女の背後から手が伸ばされそのまま肩に回る。

『…どうだ?大きくなっただろう?』

『うん…』

その手の主はシャカだ。二人で並び、いのりが見えなくなった方を見つめたまま彼女は言う。


『連れて来てくれて、有難う。おかげで、話すことが出来たわ』

『…あぁ』

実はいのりを連れて行った屋敷は、彼女の魂が眠っていた場所だった。

同じ力を有するいのりの夢に肉体があるシャカは入れない。だから、魂だけの彼女にいのりを託したのだ。

上手くいったことに、彼らはホッと息をつく。

『それにしても、本当に大きくなったのね。見られてよかった…もう、思い残す事はないわ』

『…そんな事、言うな』

彼女の身体をシャカは抱く。また、彼女もその身体に手を回した。
< 452 / 513 >

この作品をシェア

pagetop