二重人格神様~金と碧の王~

『まだ、俺が…いるじゃないか』

『俺じゃなくて、私でしょ?口が悪いわよ?』

『……』

なんて、ムードのない女だ。シャカはそう思う。「そうだね」と、気の利いた言葉でも言えばいいものを。

『でも、寂しいわね』

不意に、彼女は面白そうに笑い、シャカを見上げる。

『なにが?』


『だって、いのりが誰かの者になるなんて。嫁にはやらないって言っていたのにね』

その言葉にシャカの頬がわずかに赤く染まる。そして、そのまま乱暴に彼女を抱く。


『いつの話だ。いのりが幸せになればそれでいい』

『そうね。だから貴方は、いのりを人間として育てることにしたんだもの』


『あぁ。長い時間を生きていても、良い事はない。ただ、流れていく時間を茫然と過ごすのはとても悲しくて、つまらないから』


『…うん』


『いのりには限りある時間を精一杯、幸せに生きて欲しい。そう思っていた。だが、彼らと生きることが幸せなら、それでいい』


『そうだね』


『何もないこの世界で、生きる事に興味がなかった俺が…お前に出会って初めて意味を見つけたように、いのりも…彼らの傍で長い生を持つ意味を見つけられるといい』


シャカの言葉に、彼女は黙る。そして、一滴の涙が頬を伝う。

『ごめんなさい…わたしも…もっと…』


『それ以上は何も言うな。俺は、魂のお前でも傍にいてくれればいい。いつか、輪廻の輪を通り生まれ変わる時まで…共にいよう』


『…はいっ』

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