二重人格神様~金と碧の王~
(だいたい、連れ戻して、どうするんだ。あの覚醒したいのりを見る限り…当分は目を覚まさないだろう。それに、目を覚ました所でいのりはいのりなんだろうか)
やはり、グレンはこわかった。覚醒した彼女が自分をまた愛してくれるのか。また、あの笑顔で名前を呼んでくれるのか。
触れさせても、くれるのか。案外、俺は臆病だったのかも。と、グレンは思う。
(いのり…こんな俺を許してくれ。守れなかった俺を許して欲しい…きっと、いつか…時が来たら、迎えにいく…それまで、まっていてくれ)
それから、数日間、グレンは部屋に篭り、暇さえあればいのりの事を考えていた。
それをアレスやフェイランは見守っていた。内心、早くいけ!と思っていたが、誰もそんな事は口に出来ない。
そして、また、数日が経過したある日、部屋を訪れたアレスの言葉にグレンは愕然とした。
「…そんなに、具合が悪いのか?」
「はい」
「……」
アレスはこの数日前に、シャカの世界を訪れていた。
それは、グレンの命令ではなく、自分の判断で行ったことで、グレンもその事実をいま、知ったのだ。
いのりの具合が覚醒した事により、とても深刻らしい。まるで、生気がないようだったとアレスは言う。
「あの、本当にまだ…行かなくてよろしいのですか?」
「…俺が行っても、なにも変らない」
冷たく返すグレンにアレスは手を強く握り、言う。