二重人格神様~金と碧の王~
「ですが…いのり様は、求めています。その…きっと嫌な夢でも見たのでしょう」
「…?」
「誰も迎えになど来ない、と。自分は暇つぶしだったんだ…愛されてなどなかった、と、嘆いておりました」
アレスの言葉に、グレンは目を大きく見開く。
「いのりが…そんなことを?」
「はい。いのり様は正気を保っていますが、きっと私らの知らない何かに苦しんでいます…それでも、行かないおつもりですか?いのり様のことを大切に思っているのなら、行くべきです」
アレスの言うことは正しい。ただ、また自分のもとに連れてきて守れなくなるのが怖い。
が、しかし…そのようなことを聞いて、黙ってはいられない。
(暇つぶしだと?愛されてなかった?あんな風に優しく接するのも、壊れ物のように扱うのも、お前を思っているからだろう)
その時、グレンは決心した。いのりを迎えに行くことを。
怖い気持ちはある。だが、勘違いをされたままと言うのは気に食わない。それは、グレン自身の気持ちを疑っているからだ。
(あの女…ふざけるな)
そう思い、急ぎ足で部屋を出た。アレスの呼び止める声を無視し、外にでる。
「…」
が、その瞬間、目の前に飛び込んできたものに思わず固まる。
「…いの、り?」
目の前には、屋敷の入り口で倒れているいのりがいた。