二重人格神様~金と碧の王~
本物か。あのシャカが悪さをしているのではないか。悩んだ末、近寄るとそれはいのり本人だった。
グレンが知っているいのり。髪の色や少し変わった雰囲気を除いては何も変わっていない。
手を伸ばし、その腕に抱けばそれはより一層感じる。
(少し…痩せたか?顔色も悪い…でも、なんでこんな所に?いのりはシャカが連れて行ったはず…つれて来たと考えても、此処で倒れているのはおかしい)
「……」
だけど…。その姿を見て抱きとめれば、ホッとしている自分に気付く。やはり、いのりが傍にいないと何も出来ない。
いのりが傍にいるだけで、生きる理由になる。そう、グレンは思った。
青白い頬にふれ、額に軽く口付けを落とし、そのまま立ち上がる。そして、屋敷に入りいのりをベッドに寝かせたのだった。
***
今度の夢はとても優しい夢だった。
グレンさんと手を繋いで、どこかを歩いている夢。海鈴さんに深界の文字で書かれた本を読んでもらう夢。
最近、嫌な夢ばかりを見ていたからかな?この夢はとても心地よくって幸せな気分だ。
『いのり』
『…』
私の名前を呼ぶ声。触れる肌、感じる温もりがずっと続けばいいと思ってしまう。