二重人格神様~金と碧の王~
「…え?!」

はじめて聞いたであろう話しに、私は頷いた。


「そう…だったんですか?」

「ああ。でも、彼の命はとても長くて短いものだったんだ」


「身体が…弱かったんですか?ごめんなさい…その話、覚えてなくて…」

「いいよ。彼には、とても悪いことをしたと思っているよ。生まれてから、彼が欲しがるものを…すべて僕は奪っ
てきたんだ」

何かを思いだすように空を仰ぎ、かれは続ける。

「僕の一族では、稀に希少児が産まれることがあったんだ。それは、突然変異で、親とか祖父母とか血は関係なく、突然生まれる。例でいえば…グレンと同じような感じかな」

グレンとは海鈴さんの弟。瞳が左右で違う。前に、そんな話をしたのを覚えている。瞳のせいで、一族からいじめられていた。


「その希少児が、その彼だったんだ。グレンとは違って…完全に一族とは違うものだった」

「…あ…うん…」

あれ、なんだろう…なんか、変な感じがする…

「残酷な風習だったよ。一族でその希少が産まれると言うことは、存在だけで大罪だった。だから、その希少をとても暗く、遠い場所に閉じ込め誰にも目に触れることのないように隔離をした」

「……」

「幼い子供だったのに、誰のも愛されることも、誰にその存在を見られることなく彼はその暗闇の中…時を過ごした。毎日泣いていたのを僕は見ていたんだ。暴れて、自傷行為もしていた」

「…はい…」

「苦しかったと思う。彼の気持ちを考えることは出来るけど、その本当の苦しさは僕にはわからない。だれにも、必要とされない悲しさ、手を差し伸べてくれるものがいない孤独は…耐えられないもんだっただろうね。そんな風に彼が苦しむ中、僕は、ちがった」
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