二重人格神様~金と碧の王~
「愛されていたと思う。欲しいものはなんでも手にはいった。孤独とは無縁で育ったし、彼をみて…こうはなりたくないって…思っていたよ。あぁ、良かった。彼が僕じゃなくて…ってね」

苦笑いをこぼす海鈴さん。その顔はやはり、とても暗い。

「長い時間…彼はその暗闇に閉じ込められて、次第に彼の存在自体、誰もが忘れ生まれたことすら忘れてしまった。次第に彼は心を閉ざし…自身の気持ちを閉じ込めた」

「それは…どういう、こと、ですか?」

「…この世界から消えた」

「…それって…」

「あぁ、もう、いないよ」

「……」

「そんな悲しい顔をしないでくれ」

手を伸ばし、私の頬を包み、目元にキスを落とす。

「彼の最後は、とても誇らしいものだったよ」

「…そんな、そんな悲しい事ばかりだったのに?」

「あぁ、実はその話にはまだ続きがあってね…彼は、その長くて短い時間のなか、とある人と出会って…沢山のものを学び、彼女から沢山の感情を貰ったんだ」

「…え?」

「すべてを諦め、絶望していた彼が愛し、またそんな彼を愛した女性がいた。彼にとって、彼女は全てだったよ。彼女が傍にいるのなら、生きたいと…彼は言っていた」

「…それなのに…もう、いないんですか?」

「うん…彼女は…その…なんて言うか…そうだ、その、少し身体が弱ったんだ。彼が彼女を大切な存在と自覚した時…彼女の灯火は小さいものだった」

「……」
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