二重人格神様~金と碧の王~
「だから、彼は選んだんだ。彼女が生きて、幸せになることを…自身の希少の力を使って彼女に長い時間を与えて…彼は、消えていった」

「…あ」

「彼が出した答えは、間違っていると思うかい?」

「…わかりません…」
「いのり?」

「…わかり、ません…」

「え、ちょ…なんで、泣いて…」

気づけば、私の頬を涙が伝っていた。

なんでだろう。同情とか、そんなんじゃない。なぜだか…涙が零れて止まらない。

胸が異様に苦しくて、まるで自分が経験したかのように苦しい。

「…いのり…」

「ごめんなさい…なんか、わた…し…っ」

「僕のほうこそ、ごめん。こんな話…しなければよかったね」

そういうと私を引き寄せ、子供をあやすように背中を撫でた。

「落ち着いて。ごめんね…いのり。大丈夫だから…」

「うっ…」

なんで、なんでだろう。なんで、こんなにも…

「ごめんね。いのり…」

「う…うっ」

「泣かないで。彼は幸せだったんだ。だから、愛する彼女に生きて欲しかった。傍にいられなくても…彼は…本当に…愛していたよ。幸せだった…それは…僕が一番よく分かっている。僕が一番…近くで見ていたんだから…」

泣き止まない私を少し強く抱きしめ、また空を見上げた。

「本当にごめんね。私はいつお前の大切な者を奪ってしまう。だけど…今回は…お前の分も大切にするよ…だから…安心して…」
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