虹色ドロップ
*Red
「わーっ!これ、なんていう曲!?」
静かな森のすぐそばにある小さな家。
外側や壁、床は全て木で作られている、簡易キッチンとグランドピアノしかないわたしたちの秘密の場所。
家が小さいせいか、真っ黒のグランドピアノがやけに大きく見える。
天野めい。16歳。ごくごくふつうの高校1年生。
「...めい、うるさい。耳もとで叫ばないで」
そして、もう付き合って2年たつ彼女に対してこんなに冷たいこの人は
宮原怜。わたしと同じく高校1年生。
「ねっ、これなんていう曲...!?」
ちょっと声のボリュームを下げてもう一度尋ねる。
「...トロイメライ」
「トロイメライ?」
「...ん」
いまさっき、怜が弾いてくれた曲。
怜は毎日、学校が終わるとこの小さな家でピアノを弾く。
わたしは、怜の紡ぐ柔らかな音色が、すごくすきだ。