[完]バスケ王子に恋をして。
ーガチャ

カビ臭い嫌な臭いが私の鼻をツンと刺激する。

私達は春樹に連れられてバスケ男子部室に来た。

「座って?」

春樹が近くの椅子を指差す。

「うん」

私はそこに座ると隣にスッと春樹が座った。

「……」
「……」

二人共に無言でこの空気が重い。

……春樹は私が話してくれるのを待ってるんだ……。

私は重い口を開けた。

「ごめんね?」

話した第一声がこれ……。

本当は本当のこと言いたいのに……バカ!!

「別に?奈未が話したい時に話してくれればいいから」

何でこの人はこんなに優しいんだろ……。

その言葉で私は安心して素直に話すことが出来た。


「はぁ……」

隣で深いため息をつく春樹。

……引いたよね……きっと重い女だと思われた……。

昨日付き合ったばっかりなのに呆れられちゃった……。

そう思ったら涙が出そうになった……。

「そんなこと考えなくていいから」
「……え?」
「俺の隣にいて欲しいのは奈未だけだし」
「……ほんと?」
「嘘言うかよ……つか何で泣きそうになってんだよ……」
「わかんない……」

そういった時静かに何かが私の頬を伝った。

涙だと気付いたのはそんなに遅くなかった。

「泣くなって……」

春樹は私を優しく包み込むように抱きしめる。

そのせいで私の涙は倍増……

「ごめんな……」

弱々しく私の耳元でそう呟いた。

「何で春樹が謝るの……?」
「ごめん……俺が不安にさせた」
「違うよ?私がただ勝手に不安になっただけ……ただ……」

そこで言葉を止める。

「ただ?」
「……しばらくこのままがいい……」

きっと私の顔は真っ赤になっているだろう……。

「いつでもこうしてやるよ……」

そう言った春樹の口調は俺様で何だか海斗に似ていた。





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