[完]バスケ王子に恋をして。
「私……3日前に倒れたの」

静かに出来事を教えてくれる咲羅。

「それから吐き気して……出すもの出したんだけど全然治らなくて……そのまま撮影は中止……その後私はある場所に寄って帰ってきたの」

倒れた……吐き気……それは紛れのない事実……。

「そして昨日……私撮影してたの……その時ちょうど奈未が来てね?それから奈未と話してたら急に具合悪くなって……そのまま倒れてここに運ばれたの……」

運ばれた……それは今ここに弱々しく座っている咲羅が証明している。

「ねぇ……私3日前どこいったかわかる?」
「え……?わかんないかも……」
「薬局だよ」
「……薬局!?」

思いがけない言葉に戸惑う俺。

薬局行って……何するんだよ……

「なに買ったと思う?」
「ビタミン剤とか?」
「なわけないじゃん……正解は妊娠検査薬」
「……は?」

今の言葉で俺の頭は真っ白になった。

「結果は陽性だった……」

今まで倒れて吐き気したのは……咲羅が妊娠してたからか……?

「でもちゃんと病院に行って調べてないからわかんないって思って……昨日撮影の後に病院寄ってこうと思ったんだけど……倒れて今にあたるわけ……」

咲羅は切なくニコッと笑って前を向いた。

「でも……倒れた時に調べたんだって……結果は……どうだと思う?」

挑発的な笑みを浮かべて俺を見る咲羅。

「結果はあたり……妊娠してたよ……8週目だってさ」

そう言った瞬間咲羅の目が微かに潤んだ。

「咲羅は……どうすんだよ?」
「……この子は海斗の子だと思う……他に心当たりないから……」
「ごめん……」

俺はなぜか自然とそんな言葉が出てきてた。

「……なんで謝るの?嬉しいことじゃん……海斗のせいじゃないから」

また無理して笑う咲羅。

その笑みに俺は罪悪感でいっぱいになる。

だって……間違いなく咲羅も俺も望んでた訳じゃない……。

まだ若いし……結婚だって考えてなかったのに……いきなり子どもって言われても実感が湧かない……

しかも咲羅を傷つけているのは俺なんだから……

咲羅がつらい思いをするのには俺が関わっているから……

「ねぇ……とりあえずエコー見てみない?」
「え……?」
「私まだ見てなくて……それに写真見ないと私の中に子供がいるって実感湧かないからさ?」

無理に苦しそうに笑う咲羅……

でも今俺はそれに触れてはいけない……

もっと咲羅をつらくさせるから……

「でも咲羅もう動けんの?」
「何言ってんの?動けるに決まってるでしょ?妊婦が絶対動いちゃダメなんて決まりないでしょ?それに海斗も一緒に見ようよ?」
「え……?」
「見たくない?赤ちゃん……」

寂しそうに俺に聞く咲羅。

「なわけねーだろ?」
「そっか、じゃ、行こ?」

そういって俺達は看護師さんに案内されて産婦人科に来た。

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