[完]バスケ王子に恋をして。
「……」
「……」

病室に戻ってき俺らは何も変わらない。

変わったことと言えば咲羅が泣き止んで益々気まずくなったこと……

でも話さないと何も変わらないんだ……

「咲羅」
「……」

名前を呼んでも咲羅は外を向いたまま……

「おい、咲羅」

咲羅の体はピクッとするが俺に応答はしてくれない。

「咲羅……頼むから俺のほう向いて?」
「……いや……」

応答がこれかよ……

「咲羅」
「……いや……私海斗と話すこと何もないもん!!」
「おい咲羅!!」

俺の怒鳴り声が部屋中に響き渡る。

その声に咲羅はビクッと怯える。

きっと俺が怒鳴ることが少ないからびっくりしたんだろう……

「悪い……でも咲羅と話さないでどうすんだよ……」
「だって……」

そこまで言って黙り込む咲羅。

「なんで産まないって決めた?」
「……」
「咲羅」
「……だって無理だよ……私達が親になるなんて……しかもこの子が可哀想だよ……」

そういって初めて俺に顔を見せた咲羅。

咲羅の目はまるで抜け殻のように冷めきっていた。

「だからって……そんな簡単に落とせる訳ないだろ?人の命なんだぞ?咲羅一人で決めるなよ……」
「わかってるよ……でも……でもっ!!私が母親なんて出来ないよ!!」
「なんでそういうんだよ……」
「だって……私は育児放棄されて……施設に引き取られたのに……私きっと……この子に同じことしちゃう!!」

そういって再び泣き出す咲羅。

たしかに同じ過ちを犯すかもしれない……

けど……

「これは咲羅だけの問題じゃないだろ?俺達二人の問題だ……さっきも言ったけど咲羅一人で何でも決めるな……」
「それに……私仕事だってまだしたい!!まだ私達22だよ!?それに海斗だって仕事転職したし……前よりお金入って来ないのに……それで私達の子どもを育てるの?」
「……」

何も言えなかった……

本当のことだから……

咲羅は今人気絶頂期だし俺はプロからコーチになったばかり……

咲羅のほうが稼ぎがいいのにこの俺が3人を養ってあげれるのか……?

「それに……私達結婚する気だってなかったよね!?なのにいきなり子ども産んで結婚なんて……私達が崩れるよ!!」

そんなこと知ってる……。

たしかに結婚する気なんてなかった……。

まだ後の話だとずっと思っていたから……

でも……子どもが出来たなら別だ……

結婚しないと咲羅と俺どちらかが引き取ることになるがどちらも無理だろう……

「ねぇ……だから無理なんだよ……私達なんか親になったらダメなんだよ……」

たしかにそうだ……

そうだけど……

「咲羅はどう思うんだよ?」
「え……?」
「それは現実を見てだろ?本心はどうなんだよ……」

咲羅の本当の気持ちが知りたい……

「どうって……今言ったでしょ?無理だって「さっきかわいいって言ってたよな?」
「……え?」

咲羅は診察室でエコーを見てたしかにかわいいと言っていた……。
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