[完]バスケ王子に恋をして。
「それから私は数日後記憶を取り戻して……春樹と今までと同じように付き合うことになりました……けど……」

私は思わず声が震える。

もう私の視界はぼやけていた。

「春樹に酷いことしたのにって……春樹に守られてばっかりじゃダメだと思って……私は春樹のもとから去りました」

私の頬には冷たい感触が伝わる。

何で泣いてるのかわからなかった……

けど私の涙は止まることを知らない。

「携帯も解約して……親にも連絡先を教えないで……ただ自分だけ一人で生きれるように私は名古屋に来ました」

私は春樹に頭をポンとされてそれは過去だと言い聞かせる。

大丈夫……大丈夫……ちゃんと今私の隣には春樹がいるよ?

「何年か経った時偶然カラオケで咲羅に会いました。その時私の歌を聞いた咲羅が私の歌を事務所に送って……それが見事採用されて……それがNANAの始まりでした」

私はニコッと笑って涙をごまかした。

「私はデビューした時仮面とマントを被ってトークもせずにただ歌だけ歌ってました。その理由は……春樹に姿を見せたくなかったからです」

私は春樹の目をしっかりと見てそういう。

でも……ただ春樹はひたすら私の涙を拭いながら私を安心させるように頭をポンとなでるだけ。

「私は春樹のもとを去る時……私は一つだけ春樹に嘘をつきました」

すると一気に静まり返る会場。

「私は春樹に強くなったら必ず戻ってくるとそう告げました……しかし私は二度と春樹と会うつもりなんてありませんでした」

その瞬間またカメラのフラッシュが眩しくなる。 

「春樹には酷いことしたし……合わせる顔なんてどこにもなかったんです……けどそれとは逆に……咲羅は私に姿を見せることを勧めてきました。もちろん答えはいつもノー……けれど理由を言わないことなんて出来ない……だから私は咲羅に本当のことを話しました」

私はそろそろ涙が止まってきて視界がよく見えるようになった。

「咲羅とはそれから喧嘩しました。けれど……咲羅の一言で私は変わったんです……それは……あいつはずっと待っているって」

私は春樹に微笑みかけると春樹も可愛らしい顔で笑ってくれた。


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