[完]バスケ王子に恋をして。
ーダンッ……ダンッ……
静かに俺のはじくボールの音が鳴り響く。
「俺本気でやっていーの?」
海斗は水を飲みながら俺に聞いてくる。
ってかそれ俺のセリフだし……
「つか、春樹老けたんじゃね?」
「は!?お前に言われたくねーよ!!」
「まぁ、俺は老けてても相手も子どももいるんで構いませんけどー?」
マジでムカつく……
こういうとこ全然昔と変わってない。
いや、もしかしたら今のほうがムカつくし。
「じゃ、やるか」
そして俺達は本気モードへ……
まずは海斗から……
ーダンッ……ダンッ……
懐かしい癖のあるドリブルが耳に響く。
ーシュッ……
海斗が俺の左を突っ走ろうとするが俺もそんなバカじゃない。
この後どっちに行くか予想くらい出来る。
やはり海斗は右に体を傾けた。
よし……
俺は素早くデイフェンスにつき海斗からボールを奪う……はずだった……
しかし海斗は傾けたままその場からボールを放った。
海斗の傾いた角度は45度以上……
しかもここからだと3ポイントになる。
助走もつけてないのに入るなんてありえない。
そう思って海斗が放ったボールをバカにして見ていると……
ーシュッ……
「……え?」
綺麗にそのボールはゴールに吸い込まれた。
そしてその瞬間海斗の体が床に倒れ落ちる。
「ふ、俺もやれば出来るんだな」
そう言って海斗は俺に立たせと手を差し伸べてくる。
俺がその手を素直に受け取ると……
「次はお前だぞ?」
そう言った海斗は笑っていたが目は一切笑ってなかった……
俺は不思議に寒気を感じながらボールを取りにゴールに向かった。