幕末の神様〜桜まといし龍の姫〜
脅し
「うおーー!かっけえー!」
子供のような無邪気な笑顔で歓声を上げた平助は、大きな木箱から鮮やかで明るい浅葱色の羽織を取り出す。
そしてそれを自分の肩に合わせて、ぐるぐると回る。
芹沢さんが大坂で調達したお金で質屋に作らせたという浅葱色の羽織。
それはつまり、この浪士組の隊服ということだ。
これをきていれば、斬り合っているときに間違って味方を斬ってしまうことはないだろうし、何せ民衆に強い印象を残すことができる。
それは例えいい意味ではないとしても、
悪名は無名に勝るだ。
隊服を見て喜ぶ平助をよそに、総司、斎藤くん、左之さんは減なりしていた。
「どうしたの?三人とも」
声を掛けると、総司が羽織を自分の体に合わせながら、こちらを見る。
「ねえ、譲はこの羽織をどう思う?」
いきなり問われ、譲は答えを迷ったが、素直に思ったことを口にする。
「ちょっと……派手すぎ…かしら」
「同感だ」
とちゃっかり羽織を着ながら口を開いたのは、斎藤くん。
彼はどこか浅葱色の明るさが気に入らないらしい。
まあ確かに、斎藤くんには合わないかもしれない。
「だよな。これはちと恥ずかしいぜ」
左之さんが羽織を肩にかけながら、ため息をつく。
「だよねぇ。これじゃ、敵に僕たちの居場所を教えるようなもんじゃない」
総司が文句を並べたてる。
そんな四人の会話を聞いていた鬼さんが一人。
こちらを睨む。