幕末の神様〜桜まといし龍の姫〜


「さすがだな譲」


汗を素手で拭いながら、左乃さんが賞賛する。


譲も袂から取り出した手拭いで額に滴る汗を拭くと、少し亀裂の入った木刀を見た。



これは稽古ではもう使えまいと判断していると、急にくらっと眩暈がして、態勢を崩しそうになり、とっさに持っていた木刀で身体を支えようとするが、かかった体重に耐え切れず、まっぷたつに折れる。



そのまま譲は地面に崩れ落ちた。


左乃さんが奇声をあげて、慌てて譲のもとに駆け寄る。



「おい!しっかりしろって!譲!」


眩暈と共に頭痛も併発し、目頭をおさえる。

やがて自分を心配する左乃さんの声も遠くなり、譲は意識を手放した。







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