幕末の神様〜桜まといし龍の姫〜
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前から薄々、気がついていた。
姉上は最近、誰かと頻繁に文のやり取りをしていたし、やたらと、『試衛館』という道場のことについて知りたがっていたから。
自分は、姉上に捨てられるのかもしれない。
だが、捨てないでとも言えなかった。
そんな甘いことを言える状況ではなかった。
数年前、白河藩士であった父が死に、母とも死別していたたために、家は急に貧しくなった。
姉上が婿をとって、家督を相続させたが、それでも、自分のような育ち盛りの子供を世話するのは大変らしい。
姉は文句一つも言わなかったが、でも、限界が来たのだろう。
そうして―――、まだ八歳の沖田総司は、姉のみつに連れられて、試衛館にやってきた。