幕末の神様〜桜まといし龍の姫〜



瞼の奥まで射し込む朝日と鳥の鳴き声に、譲は重たい瞼を開けた。


ゆっくりとまだ気だるい身体を起こすと、誰が先ほど置いていったのであろう、布団の脇で出来立てのお粥が湯気を立てていた。




みんなの心優しさにしみじみとしながら、譲はありがたくそのお粥に箸をつけた。



昨晩のお粥もそうだったが、身体に気を遣ってくれていたのだろう、塩気と醤油は控えめで、滋養の高い卵が使われていた。



身体に優しいそのお粥を全てたいらげると、譲は寝ている間に少し乱れた髪を整え直し、袴の帯も締め直す。



見た目的にも男装を完璧にすると、譲は左之さんが床の間に置いてくれていた自分の刀の大小を腰に差すと、布団を畳み始めた。



今日からまたこの組のために頑張ろうと意気込み、布団を押入れにしまうと、部屋の障子が開かれた。



振り返ってみると、いつもよりも怖い顔をした土方さんと、難しい顔をした近藤さんがいた。




「もう体調はいいのか?譲」



近藤さんの問いに譲は心配をかけまいと、笑顔を振る舞う。



「はい。ご心配かけて申し訳ありませんでした。今日からまた頑張ります」



そう言って頭を下げて、左之さんの部屋が綺麗か確認して出ようとすると、背後から、「待て!」と土方さんの声が飛んだ。





「何ですか?土方さん」




「今からお前に少し話がある。来い」



そう言うと近藤さんと土方さんは譲に目もくれずにすたすたと行ってしまった。









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