幕末の神様〜桜まといし龍の姫〜
ー近藤さんが手を上げた。
そのことが、この部屋を静寂に導く。
すると近藤さんがはっとしたように息を呑む音がした。
「すまん……!譲…!」
譲は何も答えない。
そっと叩かれた頬に手を添える。
赤くなって熱を持っているのだろうか、手がとても冷んやりと感じられた。
「譲……」
土方さんが心配げに声をかけるが、譲は何も言わず、障子を開け放つと、逃げるように部屋を飛び出した。
その去った後の床に残っていた雫が、陽の光を反射した。