幕末の神様〜桜まといし龍の姫〜
時は少し戻って、譲が屯所をでていったころである。
それぞれの朝を迎え、みな近藤さんの部屋で、近藤さんと土方さんが戻ってくるのを待っていた。
平助はあぐらをかきながらそわそわしており、原田はどんと構えており、永倉は虫の居所が悪そうに、頭を掻きむしり、源さんはため息をつき、斎藤と山南は沖田の動向を監視していた。
総司は壁にもたれながら、今にも譲のもとへ行きたいという衝動を抑え、もどかしさを募らせていた。
そして、一堂が待っていた二人の影が障子に映る。
緊迫した中、近藤と土方が部屋に入った。
二人は無言で上座に座ると、難しい顔で腕を組む。
「で、どうだったんだ?」
言葉をきったのは原田だった。
すると近藤の右手が震えだし、近藤は必死にそれを抑えているようだった。
「近藤さん……大丈夫ですか?」
総司が声をかけると、近藤さんがいきなり額を畳に押し付けた。
「俺は……取り返しのつかないことをした‼︎」
畳を掴むように、近藤は拳を握りしめ、ぎりぎりと歯をくいしばる。