幕末の神様〜桜まといし龍の姫〜
新入隊士
今日は少し夏の暑さが和らいでいる陽気だった。
色々あって充実していた夏という季節ももう終わろうとしているのだろうか。
騒がしかった蝉の鳴き声もいつの間にか忽然と消えていた。
一通りの家事をすませ、譲は縁側でしばしの休憩を取っていた。
そしておもむろに懐を探り、ある句集を取り出す。
もうすっかり覚えきってしまったその句集をパラパラとめくり、大好きな詩を口ずさむ。
「梅の花 一輪咲いても 梅は梅」
ふふっと独りでに笑っても鬼副長はいつものごとく飛んでこない。
その理由は、かねてより募集をかけていた新入隊士が集まっているのだ。
隊の幹部たちは人選のためにその集まりに召集させられていた。