幕末の神様〜桜まといし龍の姫〜
そんな出来事を思い出しながら、譲は島田と京の都を散策していた。
いくら新入隊士で自分の部下とはいえども、いきなり仕事を与えることはできない。
まず、京の土地について知ってもらわねばならない。
どんな店がどんなところにあるか、また京の都は江戸に比べて道が入り組んでおり、覚えるのもひと苦労なことだった。
「それにしても京の都は賑わってますね」
島田が辺りを見渡しながら感嘆する。
「ええ。言い換えれば、何をしていても気付かれにくいってことね」
譲は不逞浪士にとって京の都は恰好の場所なのだと説明する。
「それに京の人って口が硬いし、商人の中には、東言葉を喋る人にものを売らない人もいるのよ。こっちの言葉を喋る人にしか親しくしない傾向があるのよ」
「なるほど。勉強になります」
島田は頷きながら譲の後をついていたが、ふと足音が途絶え、譲は後ろを振り向いた。
すると島田は足を止めてある店をじっと見ていた。
その店を見て譲は思わず吹き出す。
「寄っていく?」
笑いながら近づくと、島田がはっとして譲を見た。
「と……とんでもありません!先に行きましょう!」
「見た目によらず、甘いものが好きなのね。意外だわ」
譲の押しの言葉に島田は折れて、照れたように笑う。
譲は島田と金平糖をお焼きを売っている店に向かった。