幕末の神様〜桜まといし龍の姫〜

剣への誓い









ぎらぎらと暑い日差しが大地を照りつける。




こんな炎天のもとでどこにいったのだろうと、譲は汗をかきながら総司を探していた。



(一体………どこにいったんだろう)



今日は一緒に剣術の稽古を近藤さんに学ぼうと約束していたのに。



ぶつぶつ文句を言いながらも譲は総司を探し続けた。




しかし、どの部屋をくまなく探してもいっこうに見つからなかったために、休憩をしようと譲は仕方なく縁側に腰掛けようとして、目にとまった姿にずるっと転(こ)けそうになった。




総司が庭で黙々と草むしりをしていたのだ。



「そ……総司!?」



思わず上げてしまった譲のみっともない声に反応して、総司が振り返る。



「ん? どうしたの?」



そう言って首を傾げる総司に、譲は小さくため息をつく。



譲はつっかけを履くと、ずかずかと大股で総司に近付き、隣に腰を下ろした。



「どうしたのさ?」




心配そうに声を掛ける総司をよそに、譲はいそいそと手を動かして、草をむしった。



それを見た総司が、譲の手を押さえる。



「これは僕の仕事だから、譲はやらなくていいよ」



「でも、二人でやったほうがはやいじゃない。こんな蒸し暑い日に、一人でこんなことやっていたら、暑さで倒れるわよ」



だが、総司は素直に、手伝ってとは言わない。


どこか浮かない顔で譲の目を見ている。



譲は、今度はわざと総司に聞こえるように大きなため息をついた。



「はあ……」


「な……なに?」



拗ねたように頬を膨らませる総司のその頬を指で突く。



「だ、か、ら。何度も言ってるじゃない。私を頼ってって。私が総司だったら、何度でも総司を使ってるわ」



「う………、それはそれで酷いよね」



「だから、気にしなくていいの。ね?」



にっこりと無邪気に微笑みかけながら総司に相槌を打つと、総司が突然、袖で顔を覆い隠した。




どうしたのかという問いかけを遮るように、総司が言葉を重ねる。


「そ……そうだね。じゃあ………」




総司が一つ草を抜き取って、背負っている籠に入れる。



「手伝ってよ」



どこか照れくさそうに言う総司に、譲までもが何だか恥ずかしくなってくる。


「う……うん。分かった」




微妙に気まずい空気の中、二人はただひたすら草むしりに励んだ。









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