幕末の神様〜桜まといし龍の姫〜
この人が近藤さんの友人なのかと、まじまじと好奇な眼差しを送っていると、譲と総司の視線に気がついた土方歳三が、鋭い目付きでこちらを見下ろした。
「こいつらが例のガキか」
「ああ」
近藤に促され、二人は一歩、前に進み出て会釈程度に頭を下げた。
「私は龍神譲です」
「僕は沖田総司です」
と、名前を名乗って自己紹介を済ませる。
「俺は土方歳三だ」
土方はじっと二人を見下ろす。
そして、ふっと微苦笑を浮かべた。
「なんだ、吹けば飛ぶような弱そうなチビだな」
そう放たれた土方の物言いに譲と総司は失言する。
てっきり、近藤さんの友人ならば性格もいい人だと思い込んでいた二人の妄想はあっけなく打ち砕かれる。
見た目とは裏腹の性格。
近藤さんとは対極にあたる人物だ。
二人が呆然としていると、その言い方はあんまりだと、近藤さんが諭す。
「そんなことはないぞ! この二人はこの年齢ですでに、剣の腕がたつのだからな!」
自信満々に断言する近藤に、ようやく心を救われた二人は現実に帰ってくる。
だが……。
「ふん。だが、弱そうにみえることには変わりないだろうが」
心無い冷たい言葉を並べる土方。
近藤さんの説得も意味を成さない。
二人は心底立腹していた。
そしてついに、鯉口を切る。