幕末の神様〜桜まといし龍の姫〜
男装
チュン、チュン……という鳥のさえずりが聞こえてきて、譲は目を覚ます。
何度か目を瞬かせ、障子越しに降り注ぐ朝陽に目を細める。
まだ身体がだるいが、今日は炊事当番に当たっているはずだ。
いそいそと身体を起こし、手早く布団をたたむと、譲は押入れを開けた。
まだ春の朝は冷える。
襦袢だけしか着ていなかった譲は身震いする。
押入れには女物の着物と、男が着る袴がたたまれていた。
譲は迷うことなく袴を手に取ると、押入れを閉める。
腰ぐらいまで伸びている髪を隠すようにうまく結い上げ、誰が見ても短髪になるように工夫する。
まるで男のような髪の短さに仕上げると、さっさと袖を通し、急ぎ足で厨(くりや)に向かった。