幕末の神様〜桜まといし龍の姫〜
木枯らしに吹かれて枯葉を散らす木に背中を預けて、膝に顔をうずめながら、譲は、自分が今こうしてここにある経緯をふつふつと思い出していた。

打掛けすら羽織っていなかった譲は、孤独と冬の寒さに身を震わせる。

心のなかに大きく空いた穴に、冷たい風が吹き抜け、涙を誘う。

陸奥の山奥から歩き始めて幾度も陽が沈んだ。

なるべく人目を避けるために、険しい獣道を歩き、身体を丸めて寒さをしのいで野宿し、木の実を食べて空腹を満たしていた。

毎日、あてもなく、ただひたすら歩き続ける日々。

もう、くたくただった。

これからどうしようと考える気力もなくて、うとうとしかけた、そのときだった。
< 6 / 261 >

この作品をシェア

pagetop