幕末の神様〜桜まといし龍の姫〜







吉原を出る間際、譲はもう一度、後ろを振り返った。










そして、ここで紡いだ思い出が次々に巡ってくる。










確かに築かれたその思い出を噛み締め、譲は裾でごしごしと顔を拭いた。










振り返れば、大変なこともあったけど、実風姐さんに出逢えたことは、一生の宝物だと思う。









譲は、吉原の門を出た。









彼女は真っ直ぐに前を見詰める。










そこには、大切な仲間たちが出迎えてくれていた。









譲は懐に紹介状を滑りこませ、そして、自分の刀に差してある刀の柄を握る。









兄の愛刀であり、形見でもある【小嵐刀(しょうらんとう)】、家宝【龍刀】、そして背中に背負っているのは母の形見、【胡弓】。









譲は目の前で手を振って待っている仲間たちのもとへ駆けて行った。










大切なものを護るために。








二度と大切なものを失わないように。








もっと強く。







譲は彼らと共に大地を踏み出した。





































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