君に、青を――

 ……随分良く寝てんのな。

 こんなんで機嫌良くなんなら、最初からやっときゃ良かった。
 ホンっト、人間って分かんねぇ。

 まぁいいか。これからどんどん服買ってやって、ウマいモン食わせてやって……。

 じーっと寝てるとこ見てたら、起きちまった。

「ん? 寝足りたのか?」

「……指輪……」
「……ん?」
 できるだけ機嫌の良さそうな声で先を促すと、左手出してきて、
「私が最初に、小指につけてたの……」

 ……そんなのあったけか?

「大事なの……返して……」

 ……う……

「そんなに大事なモンだったのか?」
 そっと頭を抱いてやる。
「忘れちまえよ。新しいの買ってやるよ。
 オレが出すんじゃなくて、な……」

「……やだ……大事なの……」

 ……はぁ。

「……ねェよ」
「……え?」

「だから、もうねェんだよ。
 全部、服と一緒に消しちまった。

 ……消したんだよ。オレが」

 ……なんで……コイツ、泣かないんだよ。

 ……泣けよ……。
 なんでそんな悲しそうに黙るんだよ……。


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