君に、青を――

 サツキは今編み物とかいうのしてる。
 オレに編んでくれんだとよ。

 人間の服着ると、汚さねェようにとか破らねェようにとか大変なんだけどな。

 ま、ここに居る間だけ着てもいいか。

 テーブルのトコにいるサツキから離れてオレはもうひとつ作業用のテーブル作って色々やっていた。

 何してんだってサツキが訊くけどよ、先に言うと要らねェって言われるかもしれねェし。

 ……ん。できた。

「サツキ」

 ツカツカと歩み寄ると、左手を取った。

「オレが取っちまった指輪の代わりだ」

 出来上がったばかりの指輪を薬指に嵌めてやる。

「……え……」
「うるせェな、オレが出したんでも買ってきたんでもねェよ。
 ずっと作ってるとこ見てただろーが!

 受け取れ!」

 何度も同じ服屋で買い物してたら店員どもが、関連企業がウェディングも扱っているだのなんだの言い出しやがって結局荷物に婚約指輪とかいうののカタログ押し込みやがった。

 ……まあ、それ見てオレなりに、な。

「女に青いモン贈ると幸せになるんだろ? だから青だ。文句あるか?」
 呆然としてやがるサツキに畳み掛けるつもりで言う。
「オレは赤が良かったんだよ。人間に合わせてやったんだ、ありがたく思え!」

「……じゃあ、今度赤……」
「ん? 別のがいいのか?」

 サツキはオレがやった指輪を大事そうに右手で包んで、
「小指に、ヴェステルが作った赤い指輪が欲しい……」

 ……はぁ。敵わねェ。

「赦してくれんのか? オレを」
 指輪を取り上げたオレを。
 ここに……閉じ込めたオレを。

「……抱き締めて」

 言われるままに抱き締めた。
 ……なんでだろーな。ずっとこうしていたい。

 人間が喜ぶことでオレが満足するわけ、ねェのにな。

「ヴェステル、最近よく笑うね」
「最初っから笑ってやってるだろ。
 お前こそ……その、微笑みってのか? 可愛いぜ」

 人間の寿命なんざたかが知れてる。
 コイツに関しちゃあ、オレが寿命引き延ばして……とか思ってたけど、ヤメだ。

 オレたちが存在する永遠の牢獄に引っ張り込むこと、ねェだろ。

 コイツがいなくなるまで。
 ずっと、コイツを守る。


 END


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