…哀しみから生まれた妖精達よ…
キラキラ
「コン、コン、コン、
妖精さん、妖精さん。」

今日はお留守のようだね。

どちらへ出掛けたのだろう?

隣町のパン屋さんにでも
行ったのかしら?

通りすがりの老婆が言った。

「今日は満月よ、気を付けなさい」

「そっか、今夜は満月か。」

妖精さん、夕方迄には戻るでしょう。

それまで私は湖へ出掛けた。

鼻歌を歌い、スキップをしながら。

ボートを借りてゆらゆら行くの。

そして思い出す、昔話。

大好きなお祖父様と毎日のように、
この湖を訪れていたこと。

飽きもせず、毎日毎日湖へ通った。

私がこの湖を好きな理由…

お祖父様との思い出がいっぱい。
景色は全てが大好きな緑一色。
小鳥さん達の優雅な鳴き声。
緑の、香り漂う気持ち良い風。

そんなことを感じながら過ごす毎日。

時間を忘れゆく時。

癒しという自然の恵み。

「おっと、そろそろ帰らなければ」

湖さん、さようなら。

そして、また明日。

日が暮れた夕方、家路を急ぐ。

「今夜は満月だから、
早く家に帰らなければ。」

家に着くなり再び妖精さんの元へ。

「コン、コン、コン」
「妖精さん、妖精さん、
お帰りですか?妖精さん」

「はーい」

「やっと会えたわ、妖精さん。」

「村のパーティーの
招待状を渡しにきたの。」

「もちろん、行くわよね?」

「もちろん、行くわ。ありがとう」

明日はドレスを買いに行こう。

パーティーで一番目立つ
飛び切りお洒落な
ドレスを買いに行こう。

そして、朝迄踊り明かそう。

村の人々に感謝を込めて…

行ってらっしゃい…
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