ama-oto
 空腹を感じ、適当に買った食料のビニール袋から、パンを取り出してかじった。味気ない夕食。一人の適当な夕食なんて慣れているはずなのに、食べる行為ですらおっくうになってきて、半分もしないうちに食べるのを止めた。なんだろう、この感覚は。

 ぼんやりしているとまた同じ場所に戻りそうだ。

 ゆるゆると立ち上がり、気分転換を図ることにした。シャワーを浴びて、冷蔵庫から発泡酒を取りだし、一気にあおった。炭酸の刺激で少し目が冴えてきた。酔っぱらう前に目次だけでも目を通そうと鞄をあさった。少し古ぼけた本のページをめくり、意識を集中させようと努力した。

 けれども、夕立の後の記憶がそれを邪魔した。

 「それでいいのか?」
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