ama-oto
 「そんなこともないよ。そろそろ学期末だから、レポートとかもあるし。」
 「へぇ。こっちは睡眠時間削って文献読んだり、教授の相手をしなくちゃなんないけどな。」
 「今日、教授と約束だって、さっき言ってましたよね。一緒だった人は?」

 反対方向だからな。

 「逆方向だから、2,3分前に電車着てたから、それに乗ったはず。」
 「送ってあげなくていいんですか?」

 その言葉に、なぜか俺がギクッとした。

 「いいの。豊崎さん、それはそれは素敵な彼氏がいるって言ってたから。」

 その言葉と福間の視線に、悪意を感じた。

 「ゆかり、悪い、ちょっと飲み物買いたいから。」
 「あ、私も。それじゃ、また。」
 「あぁ。」

 イライラする気持ちを悟られないよう気を配ったけれども、何となく勘付かれた気がしなくもない。ただ、何でイライラしたかの原因を、ゆかりが知る由もないだろうけれども。

 ただ・・・あの視線の裏にある現実を確認したい、それが俺の頭を支配していた。

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