ama-oto
 決定的瞬間を見たわけではないけれども、ふんわりと身に纏うオーラが、「清人に愛されている」という色をしていた。遠目に見たので勘違いかもしれないから、それを清人に言えずにいる。手をつないだり、何かそれらしきことをしているわけでもなかった。けれども、言葉として表すことのできない、空気があった。私もかつて持っていたかもしれない、「愛されている」という空気が、なぜか見えた。

 目を閉じて、深呼吸をした。ふと降りてきた不安を、吐き出すように。

 時計をみると、時刻はもうすぐ16時。そろそろ家を出れば、バイトの終わる17時より少し前に着くだろう。確か…カフェの近くに公園があったような記憶がある。ひとまず、家を出てみることにした。

 土曜日の夕方は、明るく賑わっていた。家族サービスをするパパと幸せそうな家族、二人の時を楽しむカップル。彼らをぼんやりと見やりながら電車に揺られた。
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