ama-oto
 ただ、今日見たこととの折り合いがつかない自分もいた。とりあえず、乗ってしまった嘘の船を岸に留めることにした。

 『こんな遅くにメールしてごめんね。
  それから、電話に出れなくてごめんなさい。
  寝ていて気がつかなくて。
  家で休んだら、だいぶ良くなってきました。
  もう大丈夫そうです。
  心配かけて、本当にごめんね。
  でも嬉しかった。』

 嘘の上塗りといえば、そうかもしれない。ただ、それ以外、方法が思いつかなかった。メールを送信すると、気持ちが落ち着いてきた。泣きはらした跡を掃除して、布団をかぶった。虚しい気持ちの塊がしぼむのを、目をつぶって祈った。
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