ama-oto
 「トラウマかもしれない」

 玄関で私を抱きしめた清人は笑って言った。亡くなったお祖母さんが、病気だったり調子が悪い人には優しくしなさい、相手が断ろうと、ほっといちゃダメだよ、と口酸っぱく言っていたそうだ。

 「祖母ちゃんの言うことは、俺の中で絶対なんだよ。」
 「それだけ、好きだったってこと?」
 「いや、怖かった。おふくろより、部活の先輩より、なにより怖い。」

 約束は破っちゃう癖に、何かとかわいいなんて思ってしまった。額をくっつけて笑いあった。

 「ねえ、菜月」
 「なーに?」

 清人がそっと私の頬に触れた。ドキッとして清人を見ると、そっとキスをしてくれた。

 「今日は活字NG」
 「なんで?」
 「甘えてほしいから。」

 ドキリとした。そんなこと言われるなんて思いもしなかった。
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