ama-oto
 「豊崎さん、何でここに?」

 携帯の画面から目を離して顔をあげた。そこには10分前まで同じ講義を受けていた福間くんがいた。

 「資料到着メール来たから、寄らざるを得なかった。福間くんは?」
 「来週の授業の準備。抄読、担当だから」
 「ふーん」

 降り出した雨に止む気配は全く無かった。ただざあざあという音があたりを包む。不意の雨に、カサを忘れた学生たちが右往左往していた。

 「珍しいね。」
 「え?」
 「こんな時でも、豊崎さんなら猛ダッシュしてそうだけど。」

 それだけ、彼氏に首ったけというイメージなのだ。否定できない。

 「それとも、彼氏が嫌になったとか。」

 外れとも、当たりとも言えない。
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