ama-oto
 そうだった。ランチおごってもらう約束したんだった。

 「彼氏寝ている間に用件済ませようと思ったから。」

 ベッドの方をちらっと見た。まだ何も知らずに眠っている清人の背中がいとおしくて、抱きしめたくなった。規則正しく上下する肩のラインが、胸の奥をキュッと締め付けた。心を射抜くようなまっすぐな視線を投げてくる、私のリズムを崩すような一言を投げてくる男と、食事を共にすることを知ったら、清人はどう思うのだろう。

 ぐるぐるする思考に一旦蓋をして、朝の支度を始めた。今日は一人で過ごす朝ではない。のんびり考えごとに耽る暇はないのだ。

 窓の外を見やると、何となく雨の降り出しそうな曇り空だった。金曜日のことがほんの少し、頭をかすめた。
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