ama-oto
 「じゃ、僕の手伝いしてください。」
 「は?なんじゃそりゃ。」
 「謝礼、払うけど。」
 「買収かよ。」

 面倒だなと思いつつも、なぜかほっとした。すっぽかしても、理由がつけられる、なんて思ってしまった自分が嫌だ。でも、ずぶ濡れで行ったにもかかわらず、待ち合わせをすっぽかされるというのも嫌だ。

 「つれない年下彼氏、多少ほっとけば。」

 何を知ってるんだよという腹立たしい気持ちより、自分の心を見透かしたような言葉にドキッとした。その様子を見て、福間くんの目が、眼鏡越しにニヤリと笑った。

 「正直なことを言えば、ここの図書館、まだ慣れてなくてさ。資料の位置とか教えてもらえると助かる。」
 「分かった。いいよ。」

 言い訳作りに協力してもらったと考えればいいんだ、そう自分に言い聞かせた。
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