ama-oto
 「もったいないよな。」
 「何が?」
 「豊崎さんそのもの」

 思ってもいないことを言われて、飲んでいたお茶を噴き出しそうになった。そんな人間ではない。というか、そんなこと言われたら照れる。むせた。その様子を見て、福間くんがゲラゲラ笑った。笑いながらおしぼりを渡してくれた。

 咳をしている間に、携帯電話が鳴り始めた。

 「大丈夫?お茶飲んだら。」
 「ありがとう。」

 急いでお茶を一口飲んで、携帯の画面を見て固まった。清人からの着信だった。出ようと画面をタップして耳に当てると、電話の切れた音がした。なぜか、窓の外を見てしまった。当たり前というかなんというべきか、外に清人はいなかった。

 「彼氏?」
 「うん。」

 その様子と受け答えを見て、福間くんがこう言った。
< 40 / 106 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop