ama-oto
 福間くんは笑って窓の外を見遣った。朝見た空から受けた、もしかしたら降るかもしれないという印象が、そのまま現実となって落ちてきた。食事に集中している間に、いつの間にか雨が降り始めていた。

 「豊崎さんってさ、雨女?」
 「いや違う。むしろ晴れ女、かな。」
 「ふーん。」
 「今日はちゃんと傘持ってきたよ。」
 「じゃ、入れて」
 「やだ。」
 「おごってやったのに。」
 
 福間くんがぷーっと頬をふくらませて、拗ねたような口ぶりをした。その前の会話でイライラしたけれども、小学生のような態度に思わず笑ってしまった。こんなことを男性に言うのは悪いのだが、かなりかわいかった。

 普段は眼鏡をしているのもあってどちらかというと真面目でちょっととっつきづらい空気を出しているけれども、笑うと目じりが下がってかわいいと思った。女の私から見て羨ましいぐらい、まつ毛がクルっとしていて、眼鏡を外した方がモテそうな気がする。

 「そろそろ出るか。」
 「そうしますか。」
 「んじゃ、これ。」

 そう言って伝票を出してきた。

 「なーんてね。」

 顔を見合せて笑った。

 「福間くんも十分面白いよ。ごちそうさまです。」

 時折どぎまぎさせるようなことをいうけど、悪くはない人だと思った。同期として負けてられないななんて思った。まだ、そのときは。
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