ama-oto
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 あっという間に週も終わりに近づいていた。梅雨入りのニュースが流れて、季節の進みの早さにため息が出てしまった。週間天気予報は見事なぐらい傘のマークが並んでいた。朝食のパンをほおばりながら窓の外を眺めた。

 雨音は外の往来の音で聞こえない。まだ降ってはいないのだろうか。眼鏡をしていない状態では、窓の外の天気は正確に把握できない。曇り空が横たわっているだけだ。ここ最近雨の日に、頭をよぎる面倒な言葉が増える。雨が続く予報は気持ちがふさぐ。

 ぽっかりあいた月曜日の午後から、時折、福間くんのもったいないが頭をよぎるようになった。私に対して投げかけられた「もったいない」だけれども、清人の方が「もったいない」気がしてきた。

 私みたいな、まわりくどくて面倒な思考の、あまりかわいげのない女と付き合う清人。

 器用ではないけれども、考え方はしっかりしているし、頭も悪くない。いくつか単位を落としているけれども、どれも嫌になるような話をする教授のものだし、必修単位ではない。

 見た目は、私からだけでなく、たぶんヒットする女子が多そうだと推測される。ふわふわの髪の毛、なぜか離せなくなる視線、ほどよい筋肉のついた身体。どれをとっても、私にとってはもったいない気がしてならない。
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