ama-oto
 「1個だけあったよ。どーぞ。」
 「1個か。いいの?食べちゃって?」
 「だって食べたいんでしょ?いいよ。」
 「じゃ、遠慮なく」

 嬉しそうに笑って、清人はアイスを食べ始めた。けれど、半分ほど食べたところで、ふと、思案顔で私を見た。

 「なに?」
 「んー…」

 アイスをすくって、口に運びながら、清人はじっと私を見た。少し恥ずかしくて、お茶を取りに行こうとソファーを立とうとしたら、手をつかまれた。

 「ちょっと待って…ね、菜月も食べる?」

 びっくりしてふり返ると、いつもの甘い視線でこちらを見ていた。ドキッとして動けなくなった。それを見て、清人は私をソファーに座らせた。

 「ちょっと恥ずかしいかもしれないけど…」

 スプーンでひと匙すくって、私に食べさせた。甘くて冷たいアイスが、口の中の熱ですっと溶けた。喉を通り過ぎる甘い液体の感覚が、心臓の鼓動を早くさせた。
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