ama-oto
 「ちょうだい。」
 「え?」
 
 清人を見ると、ニコっと笑って軽く首をかしげて、私を見ていた。まるで、子犬が遊んでと訴えるような目をして待っていた。そんな目で見つめられると動けない。どうすればいいかわかっているけれども。

 「溶けちゃうよ。」

 動きが止まってしまった私を、清人がたしなめるように声をかけた。

 おずおずと、人差し指でアイスをすくった。それを見た、清人が私の手をつかんで、自分の口へ運んだ。恥ずかしくて目をつぶったら、清人の口の中の感触が逆にリアルに伝わってきて、体の奥がカッと熱くなった。

 「最後の一口も、ちょうだい。」

 残っていたアイスを、もう一度人差し指ですくった。清人がいとおしそうに、私の指をなめたあと、手の甲にキスをした。

 「ちょうだい。」
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